ハンドボーラーの広場
実業団チームの存在意義 - 管理人
2023/04/23 (Sun) 10:58:16
20年以上前の、JHLを法人化する構想もなかったであろう頃の記事ですが、何かの参考になればと思いましたので転載します。なお、文中に出てくる「全日本総合選手権」は現在の「日本選手権」です。
Re: 実業団チームの存在意義 - 管理人
2023/04/23 (Sun) 10:59:29
Number Webより
実業団チームの存在意義(2001年12月21日)
長田渚左=文 text by Nagisa Osada
芸術的ですらあったハンドボール
ここ数年、実業団スポーツの話題は暗い。陸上、野球、ラグビー、バレーボールなどで名門トップチームの休廃部が相次ぐ。
'98年以後、毎年50チームもが休廃部したとのデータもあるほどだ。
会社そのものの生き残りがテーマとなる時代だから、企業の抱えるチームの状況も深刻だ。
スポーツと人、スポーツと企業のかかわりあいと軋みが気にかかっていた。
師走の町、雑踏の中で、ふいに声をかけられ、スポーツファンだというその中年男性と立ち話をした。
その人は、前日にハンドボールの試合を見て感動したと言った。
ハンドボール?心が動いた。
湧永製薬、大崎電気など有名チーム名は頭に浮かんだが、ハンドボールの試合はきちんと見たことがなかった。
ゲームは、ささやかながら学校体育での経験ぐらいはあったが、全日本クラスの試合は見たことがなかった。
12月15日、全日本総合選手権男子決勝、本田技研vs.大同特殊鋼の試合を駒沢体育館に見に行った。
何の先入観もなく記者席に座ったが、あまりにも激しいゲームにコートを脱ぐのも忘れて釘づけになった。
一進一退の攻防……という言い方はありきたりだが、まさに1点の取り合い。取ったら取り返す、取られたらまた取り返す……。最大に開いた点差が2点というシーソーゲームだった。
しかもコートが縦40m、横20mと狭いから、疾風怒涛の攻めがつぶさに見られた。
ゴールエリア内に上げたボールを空中でつかみ、そのままシュートするスカイプレー、倒れ込みながらゴールを襲うようにボールを放つシュートなど、見ごたえも充分だった。
結果は1点差で大同特殊鋼が本田技研を振り切って22ー21。人間にとって最も機敏な手でボールを鷲掴み、全身を弓なりにしてシュートする姿は、アートにも見えた。
Re: 実業団チームの存在意義 - 管理人
2023/04/23 (Sun) 11:01:23
企業チームにとっての新たな指針に
ゲームに人心地ついたとき、なんでこんなに面白いのに、ハンドボールはマイナーなのかと疑問がわいた。
日本で室内球技の代表は、認知度と浸透力からいってバレーボールがNo.1だろう。ゲームの面白さなら、ハンドボールはバレーに勝るとも劣らない。しかしながら、ポピュラリティーの度合いにおいて、なぜこうも異なるのか。
大会の委員で、'84年のロサンゼルス五輪では監督を務めた市原則之氏に素直な疑問をぶつけてみた。
「ハンドボールがオリンピックの正式種目になったのは、'72年のミュンヘンからです。そのミュンヘンで、男子バレーボールは8年計画で金メダルを獲得した。我々もバレーから大いに刺激を受けました。'76年モントリオールで9位、次のモスクワ大会では最強のメンバーがそろい、入賞を狙っていました。ですが、モスクワ大会を日本はボイコットした。続くロス大会では、監督だった私自身にも温情が入ってしまい、選手の新旧交代を考えたシビアなチーム編成をできなかった。反省しています。今さらですが、'80年のモスクワで良い結果を出していたら、ハンドボールも違うものになっていたように思います」
確かに、世界の頂点を極めた競技と、登りつめられなかった競技との差は、とてつもなく大きい。
この日、3年連続日本一に輝いた大同特殊鋼の選手たちの誇りに満ちた顔を見ていたら、ハンドボールにもっと光が当てられてもいいのではないか……という気になった。
最近の実業団チームは、まったく仕事をせず、練習だけをしているところも多い。
勝利への執着が選手をプロ化させ、結局は社内から選手が孤立化する。一般社員にとっては、チームそのものが自分の会社のものという実感がわかないらしい。
取材をすると、優勝した大同特殊鋼は今の時代にはめずらしく、きちんと仕事をこなし練習をするチームだった。
全員が5時まで仕事、6時からが練習だという。
この日の大同の応援団は、必ずしも数は多くなかった。約100人ぐらいだったろうか。しかし、選手名を呼び、チーム名を連呼する声は大きくて力強かったことが印象に残った。
どっぷりと陽の暮れた駒沢体育館の脇で、選手を待つ人々の顔も誇らしげだった。
良いゲームでしたね……と声をかけると、応援で声の嗄(か)れた中年男性が名古屋弁で言った。
「もうノドがガラガラでカラカラだけど、何も飲まずにがまんしてるの。(選手に)アリガトウを言ってからビールを飲もうと思ってえー」
いい言葉を聞いたと思った。長い景気の低迷で、どの企業も大変だ。スポーツのチームなど、金ばかりかかって何もならないと判断されると、簡単にいらないものとなってしまう。
しかし、こんな時代においても普通の社員と同じように働き、その上で練習をして、他の社員を心から感動させられるならば、企業チームの存在理由は決して小さくはないはずだ。
スポーツにはスポーツにしかないモノ、そう、スポーツ力があることを、こんな時代だからこそ心に刻みたい。
普通に働き、普通に練習するチームが好ゲームで2001年を締めくくったことは、ハンドボール界以外の実業団チームにも指針となるはずだ。
Re: 実業団チームの存在意義 - 管理人
2025/08/25 (Mon) 22:15:47
NECのラグビーチームの件で思い出したので上げておきます。
時代が違うと言われてしまうかもしれませんが、長年JHLを支えてきたのは実業団チームであることは間違いありません。